最近、COPDの吸入剤について勉強をしていて気になったことがあります。質問させてもらえないでしょうか?

良いですよ。

COPDでは、病態の首座である末梢気道1)に薬剤を届けることが重要なんですよね。
ということは、吸入剤の粒子径は小さければ小さいほど、末梢まで届きやすいのでしょうか?

1)三嶋理晃: 日内会誌 . 2010: 99(9):2302-2308

そうとは限りません。
今日は吸入剤の粒子径について考えてみましょう。

粒子径と薬剤の気道内分布

たしかに直径が5μmより大きい粒子は、ほとんどが口腔咽頭に沈着し、肺に到達できないとされています。一方で、1μmより小さい粒子はほとんどが沈着せずに吐き出されてしまうという報告もあります2)3)

2)Sakagami M: Advanced Drug Delivery Reviews. 2006. 58(9-10): 1030-1060

3)Hamishehkar H. et al: Recent Advances in Novel Drug. 2012: 39-66

なるほど。では、肺内への沈着に最適な粒子径はどのくらいの大きさなのでしょうか?

直径2~5μmの粒子は、気道上皮細胞などに沈着し、2μm未満の粒子は、肺胞上皮などに沈着するといわれています4)
これらのことから、直径約1~5μmの粒子が、肺胞や気道の主要部に沈着しやすく、局所作用吸入剤における最適粒子径と考えられています3)

4)Orienti I. et al: Int J Mol Sci. 2020. 21(11): 3812

そうなんですね、覚えておきます。

テリルジー有効成分の粒子径

実際にテリルジー※1を例に有効成分※2の粒子径について見てみましょう。
有効成分であるFF、UMEC、VIの粒子径※3の範囲は、1.9~4.3μm※4という実測データが得られていま5)

※1 効能又は効果(慢性閉塞性肺疾患):慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)

※2 吸入ステロイド薬(ICS):フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA):ウメクリジニウム(UMEC)、長時間作用性β2刺激薬(LABA):ビランテロールトリフェニル(VI)

※3 MMAD:空気力学的直径の質量中央値

※4 参考値。実測値であり、市場に出荷する製品の管理値とは異なります。つまり、市場に出荷する製品が、必ずこの値になることを保証・管理しているものではありません。

5)GSK開発時資料 GSK DOF 2017N335327_00

テリルジーの3種類の有効成分は、肺内への送達に最適とされる粒子径を考慮して設計されているんですね。

そうですね。それを踏まえて、グリコピロニウム/ホルモテロールとテリルジーのLAMA/LABA成分であるウメクリジニウム/ビランテロールを比較した試験、AERISTO試験の結果を、あらためておさらいしておきましょう。

AERISTO試験 概要

AERISTO試験は、グリコピロニウム/ホルモテロール(GLY/FOR)のウメクリジニウム/ビランテロール(UMEC/VI)に対する非劣性と優越性を検討した試験です。概要はこのとおりです。

対象は、40歳以上の中等症~最重症のCOPD患者さんで、GLY/FOR群、UMEC/VI群ともに、国内で承認されている用法・用量及びデバイスで24週間投与したんですね。

ピーク/トラフFEV1

この試験の結果、主要評価項目である投与後2時間以内のピークトラフFEV1値のベースラインからの変化量は、投与24週でGLY/FOR群293.5mL、UMEC/VI群296.9mLであり、群間差は-3.4mLでした。

また、もうひとつの主要評価項目である朝の投与前トラフFEV1値のベースラインからの変化量は、GLY/FOR群82.4mL、UMEC/VI群169.6mLであり、群間差は-87.2mLでした。

TDI Focalスコア

そうなんですね。また、副次評価項目である投与24週におけるTDI Focalスコア※5は、GLY/FOR群1.23、UMEC/VI群1.60だったんですね。

※5 TDI(Transition Dyspnea Index)Focalスコア:呼吸困難に対する治療効果の評価指標で、ベースラインからの変化を示す。数値がマイナスの値であれば悪化、プラスの値であれば改善を意味する。

そうですね。次に安全性の結果も確認してみましょう。

安全性

この試験では、すべての有害事象が投与24週でGLY/FOR群40.9%、UMEC/VI群44.9%に報告されました。
主な有害事象は、両群とも頭痛、鼻咽頭炎などで、GLY/FOR群でそれぞれ34例(6.2%)、30例(5.4%)、UMEC/VI群で41例(7.4%)、36例(6.5%)でした。
重篤な有害事象は、GLY/FOR群5.8%、UMEC/VI群7.2%でした。
早期中止の原因となった有害事象はGLY/FOR群4.0%、UMEC/VI群3.6%で報告されました。
治療期間中の死亡は、GLY/FOR群及びUMEC/VI群で各3例報告され、その内訳はGLY/FOR群で急性心筋梗塞、冠動脈疾患、原因不明が各1例、UMEC/VI群で急性心不全2例、原因不明1例でした。

効能又は効果、用法及び用量

最後に、テリルジーの効能又は効果、用法及び用量についても確認しておきましょう。

テリルジーは、1日1回の吸入投与ですよね。

そのとおりです。なお、COPD※6に適応があるのは、テリルジー100エリプタのみとなっています。

また、テリルジーを処方する際は、これらの注意事項にも気を付けましょう。

※6 慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)

はい。今日のお話で、テリルジーが肺内への沈着に最適とされる粒子径を考慮して設計されていることが理解できました。また、GLY/FORとテリルジーのLAMA/LABA成分であるUMEC/VIを比較したAERISTO試験についてもよくわかりました。

今日の話を今後のCOPD治療の参考にしてみてください。

はい。ありがとうございました!

製品名はすべて、グラクソ・スミスクライン、そのライ
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