疫学と病因
ロタウイルスとは(構造・分類)
ロタウイルスはレオウイルス科に属するウイルスで、下痢を起こした患児から1973年に初めて発見されました 1。電子顕微鏡で車輪のような形に見えることから、このウイルスはラテン語の「車輪」を意味する「ロタ(rota)」と名付けられました。
電子顕微鏡で見たロタウイルス(ウイルス粒子の直径は約70nm)
提供:Dr. Erskine Palmer, Centers for Disease Control and Prevention
ロタウイルスの構造と分類
ロタウイルスの粒子は3層のカプシド(殻)でできています 2。
内側のカプシド(内殻)には11組の2本鎖リボ核酸(dsRNA)が、 中間のカプシド(中間殻)は、ロタウイルスの群(A~G)を決定するウイルスタンパクのVP6が、外側のカプシド(外殻)はロタウイルスのG型およびP型を決定するVP7とVP4があります。VP7は糖タンパクであることから「G型」、VP4はプロテアーゼ分解タンパクであることから「P型」とされています。
ロタウイルスの構造 3
ロタウイルスは、VP6の違いによりA~Gの7群に分類することができます 2。A~C群は人間と動物に感染し、D~G群は動物にのみ感染します4。ヒトのロタウイルス感染症の病原体としてはA群が最も一般的です。
ロタウイルスにはVP7で決定されるG型とVP4で決定されるP型の分類があります。これらは防御免疫の獲得に関与していると考えられています1。これまでに少なくとも15種のG型(G1~G15)と28種のP型(P [1]~P[28])が確認されています2。
さらに、ロタウイルスにはG型とP型の組み合わせによる非常に多くの株が存在しています。そのうち、全世界のロタウイルス胃腸炎発症の90%以上が、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]、G9P[8]の5種類の組み合わせ株に起因しています 5。もっとも多く存在する株はG1P[8]といわれていますが、ウイルス株の分布は地域や年によりばらつきがみられます。
ロタウイルスの分類
ロタウイルス胃腸炎の症状
ロタウイルス胃腸炎の主な症状は、嘔吐、下痢(非血液性の水様便)、発熱などで、その持続期間は4~7日です。また、当初軽度にみえた症状でも、嘔吐や下痢による脱水や、痙攣などが急に発現・進行することもあり、時間外救急外来などでの処置や入院治療が行われることも少なくありません。なお、機序には未だ不明な点もありますが、ロタウイルス胃腸炎では、痙攣、腎不全、脳炎・脳症を合併する例も報告されています。
主症状
嘔吐:突然の嘔吐で始まることが多い。
下痢:白色水様性便。血便はみられない。
発熱:3~5割程度にみられる。
その他症状
昏睡(意識障害)、腹痛、食欲不振など。
合併症
下痢や嘔吐からくる脱水、痙攣、腎不全、脳炎・脳症など。
脱水の程度に基づく治療法
CDC, Guidelines for the Management of Acute Diarrhea After a Disaster
[https://www.cdc.gov/disasters/disease/diarrheaguidelines.html,
2019年10月29日確認] 一部改変
一般的な予防策としては、手指の洗浄や消毒、水質の向上など衛生状態を整えることですが、ロタウイルスの感染を完全に防ぐことはきわめて困難です。そのため、WHOなどでもワクチン接種により重症化や死亡を抑制することが推奨されています。
ロタウイルスの感染ルート
製品名はすべて、グラクソ・スミスクライン、そのライセンサー、提携パートナーの登録商標です。
製剤写真及びPDF資料は、患者指導の目的に限りダウンロード頂けます。