製品特性
サムチレールは、ニューモシスチス肺炎(PCP)の治療及び発症抑制における内服の第2選択薬※です。
※効能・効果に関連する使用上の注意
1. 本剤は、副作用によりスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤(ST合剤)の使用が困難な場合に使用すること。
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効能又は効果、用法及び用量、作用機序
本剤の適応菌種はニューモシスチス・イロベチーであり、PCPの治療および発症抑制の両方を適応症として有します。
用法・用量はこちらの通りであり、治療と発症抑制で異なりますのでご注意下さい。本邦においてニューモシスチス肺炎の治療薬としてはサムチレールを含む3剤が承認されています。
サムチレールは、ST合剤と同様に発症抑制の適応を有する薬剤です。サムチレールの作用機序は他剤と異なり、P. jiroveciiのミトコンドリア内膜のcomplexⅢ(チトクロームbc1複合体)に作用し、ミトコンドリア内膜蛋白質ユビキノンのチトクロームb(complexⅢの構成成分)への結合を阻害し、その結果としてATPレベルを顕著に低下させ、抗P. jirovecii活性を示すと考えられています。
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ガイドラインにおける本剤の位置づけ
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臨床試験(発症抑制)
こちらはハイリスクのHIV感染患者を対象に、ペンタミジン吸入*とPCP発症抑制効果を比較した試験です。
主要評価項目はPCPの確定または推定診断率と設定されています。
*ペンタミジン吸入:PCPの発症抑制に対する投与は本邦適応外本試験ではサムチレール内用懸濁液について750mg群と1500mg群の2群、そしてペンタミジン300mgを月1回に吸入投与するペンタミジン吸入*群の合計3群で行っております。
投与期間の最長は34ヶ月であり、中央値で各群6.2ヶ月、6.0ヶ月、7.8ヶ月投与されました。本邦でのサムチレール内用懸濁液の承認用量は1500mgのため、有効性については1500mgのみのご提示となる事ご了承下さい。
主要評価項目であるPCP発症率、死亡率では両群間に有意差はありませんでした。
本試験における有害事象の発現率はサムチレール内用懸濁液750mg群96%、1500mg群98%、ペンタミジン吸入群89%でした。
サムチレール内用懸濁液1500mg群の主な有害事象は下痢、発疹、頭痛、悪心でした。本試験における投与中止に至った有害事象の発現率はサムチレール内用懸濁液750mg群16%、1500mg群25%、ペンタミジン吸入群7%でした。
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臨床試験(治療)
軽症から中等症のPCPを有するトリメトプリムまたはサルファ剤を含む治療に不耐容のAIDS患者を対象に、アトバコン錠*とペンタミジン静注のPCP治療効果を比較した試験です。
主要評価項目は有効率、無効率、生存率、投与中止に至った有害事象の発現率と設定されています。*アトバコン錠:本邦未承認
本試験ではアトバコン錠を用いて実施され、アトバコン錠2250mg/日を服用するアトバコン錠群73例、ペンタミジン3~4mg/kg/日を投与するペンタミジン静脈内投与群71例で比較しました。
アトバコン錠は本邦未承認とはなりますが、承認されているサムチレール内用懸濁液1500mgに相当するとして、承認時評価資料になっている試験です。本試験において有効率および生存率において、両群間に有意差はありませんでした。
主要評価項目である無効率のうち、有害事象による無効率の割合がアトバコン錠群4%、ペンタミジン静注群36%で有意にアトバコン錠群が低いことが示されました。
本試験における有害事象の発現率はアトバコン錠群63%、ペンタミジン静注群72%であり、アトバコン錠群の主なものは発熱、悪心などでした。
本試験で投与中止に至った有害事象の発現率はアトバコン錠群7%、ペンタミジン静注群41%でした。
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安全性情報
本剤の禁忌、重要な基本的注意はこちらの通りです。重度の肝障害があらわれることがありるので、必要に応じ肝機能検査を行って下さい。
効能又は効果に関連する注意はこちらの通りです。
本剤はあくまでST合剤の代替薬です。
副作用によりST合剤の使用が困難な場合にご処方下さい。食後に投与できない患者さん、下痢が認められている患者さんでは代替治療をご検討ください。
用法及び用量に関する注意はこちらの通りです。本剤は絶食下では吸収量が低下するため、必ず食後に服用頂くよう、患者さんへのご指導をお願いいたします。
絶食下では血漿中アトバコン濃度が大きく低下いたしますので、本剤を食後に投与できないような患者さんでは、他の選択肢をご検討下さい。
薬物動態試験では、サムチレールはほとんど代謝されず未変化体のまま94%以上が糞中に排泄され、尿中への排泄は0.6%未満でした。