検査・治療・予防
狂犬病ワクチン
狂犬病ワクチンは、“細菌学者の父”と呼ばれたフランスのルイ・パスツールによって開発されました。パスツールは、1885年に狂犬病のイヌに咬まれた9歳のジョセフ・マイスターにワクチンを接種し、狂犬病発症予防に成功しました。これが成功第一例です。なお、パスツールの命日である9月28日は、「世界狂犬病デー(World Rabies Day)」と制定されています1)。
パスツールが開発したワクチンとは、ウサギの脳で継代した弱毒狂犬病ウイルスをウサギの脊髄に感染させ、その脊髄を乾燥させてすりつぶしたものです。これは、おそらく不活化ワクチンでも生ワクチンでもなかったと考えられています。そのため、このワクチンによって強い麻痺が残ったり、死亡者もみられました。その後、ヤギ脳由来で不活化したセンプル型ワクチンや、乳のみマウス脳由来の不活化ワクチン(フェンザリダ型のワクチン)が開発されました。これら動物脳由来のワクチンは現在でも一部の国で使用されています2)。
1970年代に入ると、狂犬病ウイルスを組織培養で増殖させ、これを不活化したワクチンが開発されました。不活化ワクチンは現在世界で主流となっています。
狂犬病ワクチンの主流は組織培養不活化ワクチンです。不活化ワクチンで、代表的なものは、ヒト2倍体細胞ワクチン(Human Diploid Cell Vaccine:HDCV)、精製ベロ細胞ワクチン(Purified vero cell rabies vaccine:PVRV)、精製ニワトリ胚細胞ワクチン(Purified Chick Embryo Cell Vaccine:PCECV)の3つです3)。ヒト2倍体細胞ワクチンと精製ベロ細胞ワクチンは本邦未承認のワクチンです。
<補足>
狂犬病ワクチンには、動物脳由来ワクチンと組織培養不活化ワクチンがあります。
動物脳由来狂犬病ワクチンには、狂犬病ワクチン株を感染させたヤギまたはヒツジの脳から製造したワクチン(センプル型ワクチン)と、乳のみマウス脳由来ワクチン(フェンザリダ型ワクチン)があります。いずれのワクチンも組織培養不活化ワクチンに比較して、より重症の致死的な脳炎や多発性神経炎といった神経系副反応を起こすことがあり、しかも免疫効果が弱いことから、WHOでは推奨されていません。ごく一部の国や地域のみで使用されています4)。
製品名はすべて、グラクソ・スミスクライン、そのライセンサー、提携パートナーの登録商標です。
製剤写真及びPDF資料は、患者指導の目的に限りダウンロード頂けます。