RSウイルスとは
RSウイルス(Human respiratory syncytial virus , RSV)は、パラインフルエンザウイルスやヒトメタニューモウイルスなどの呼吸器ウイルスと同様に、通常の感冒様症状や、場合によっては下気道炎(気管支炎、細気管支炎および肺炎)を引き起こすウイルスです1)。
RSウイルスの伝播経路2)
RSウイルスの主たる感染経路は飛沫感染です。感染者の咳やくしゃみにより飛散した飛沫が眼、鼻、口の粘膜に付着する直接的な接触や、飛沫や鼻汁によりウイルスで汚染された面に触れた手から眼、鼻、口に入る間接的な接触によって感染が成立します3)4) 。
ウイルスを含んだ飛沫は1~2m程度飛び散り、手や物などの表面に付着してから数時間は感染性を保ちます3)。
通常、感染者は3~8日間感染力を持続し2)、高齢者はより長期間にわたりウイルスを排出する可能性がある5)。
基本再生産数(R0)は概ねRSウイルスで3程度6)7)、インフルエンザは1~3と報告されています(海外データ)。
感染症 | 基本再生産数 |
---|---|
インフルエンザ8)9) |
1~3 |
基本再生産数(R0)10)
感染症の伝播の強さを表す指標。なんらかの病原体に対してすべてが感受性を有する個体からなるホスト集団において典型的な1人の感染者が、その全感染期間において生み出す二次感染者数の平均値。
RSウイルスへの曝露環境
幼児や学童がいる家庭では家族内、健康な成⼈では仕事場などにおいてRSウイルスに曝露されるケースがあります。さらには、医療従事者が潜在的感染源となる可能性もあると考えられます。RSウイルスの市中流⾏期間中に⼩児病棟のスタッフの50%以上(43人中24人)がRSウイルスに感染し、そのうちの15〜20%は気道分泌物中にRSウイルス排泄をともなう無症候性の感染者であったとの報告があります4)11) 。
- IASR Vol.35 p139-140: 2014年6月号 「RSウイルスの臨床ウイルス学」
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- Hall CB et al. J Pediatr 99:100-103, 1981
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PM-JP-RSA-WCNT-230002 2024.10