RSウイルス感染のリスク
成人におけるRSウイルス感染症の症状および転帰
RSウイルス感染症は一般的に軽症ですが、重篤な合併症や重大な転帰の原因になることもあります。
- Centers for Disease Control and Prevention (CDC), RSV in older adults and adults with chronic medical conditions. https://www.cdc.gov/rsv/high-risk/older-adults.html (アクセス 2023年3月)
- Kodama F et al:Infect Dis Clin North Am 2017;31(4), 767–790
成人におけるRSウイルス感染症の重症化リスク要因
RSウイルス感染症の重症化リスクの要因として、年齢、基礎疾患、免疫機能があげられます
※:喘息、COPD、うっ血性心不全、冠動脈疾患、糖尿病、CKDなど
- Centers for Disease Control and Prevention (CDC), RSV in older adults and adults with chronic medical conditions https://www.cdc.gov/rsv/high-risk/older-adults.html (アクセス 2023年4月)
- Belongia EA et al:Open Forum Infect Dis 2018; 5(12), ofy316
- Branche AR et al:Clin Infect Dis 2022;74(6), 1004–1011
- Wyffels V et al:Adv Ther 2020;37(3), 1203-1217
RSウイルス感染症とインフルエンザのアウトカム
RSウイルス感染症およびインフルエンザで入院した患者さんのうち、肺炎はRSウイルス感染症では47.4%、インフルエンザでは25.8%でした(海外データ)。
方法
2011年1月1日~2015年6月30日にRSウイルス(n=645)またはインフルエンザA/B(n=1,878)で入院した60歳以上の成人を対象としたレトロスペクティブコホート研究。人口統計、入院前の特性を比較するために、Kaiser Permanente Southern California(KPSC)の電子医療記録から対象を特定し、ベースライン特性、基礎疾患、病院の利用状況、および臨床転帰を比較した。
Ackerson B et al:Clin Infect Dis 2019;69(2),197-203
RSウイルス関連肺炎およびインフルエンザ関連肺炎の患者背景(抜粋)
肺炎症例において、RSウイルス群とインフルエンザ群では、入院期間はRSウイルス感染症で有意に長くなりました(p<0.05; Fisherの正確確率検定およびt検定)
肺炎症例 | p値 Fisherの正確確率検定 およびt検定 |
||
---|---|---|---|
RSウイルス群 (n=43) |
インフルエンザ群 (n=25) |
||
臨床所見 |
|||
最高体温(℃)※ |
38.1 | 38.5 | 0.058 |
CRP(mg/dL)※ |
10.4 | 11.7 | 0.707 |
低酸素血症(酸素吸入必要)(%) |
33(76.7%) | 18(72.0%) | 0.773 |
30日死亡率(%) |
3(7.0%) | 2(8.0%) | 1.00 |
入院日数(範囲)※ |
30.0(4~115) | 15.2(2~85) | <0.05 |
※平均値
調査期間
2011年10月1日~2012年5月31日および2012年10月1日~2013年5月31日の冬季主体2シーズン(計16カ月)
対象(単施設研究)
日常診療下で見いだされた16歳以上のRSウイルス感染症例およびインフルエンザ症例のなかで、①市中肺炎(CAP)および医療介護関連肺炎症例(入院治療例および外来治療例)、➁肺炎を伴わない気道感染合併入院例、の各々に該当する症例
方法
レトロスペクティブ研究。対象患者の患者背景、臨床経過、合併感染、予後等の因子を比較分析した。なお、入院症例のうちで院内発症例は除外した。インフルエンザ、RSウイルスの検査施行は、主治医の判断とし、インフルエンザは迅速診断キットを用いて院内検査を施行し、RSウイルスはCF抗体価を初診時および追跡時に検査して4倍以上の抗体価の有意変動が確認された症例をRSウイルス感染症と判定した。CF抗体価が判定不能となった一部症例においてはNT法を用いて検査を行った。RSウイルスのCFおよびNT抗体価の測定は外注にて施行した。肺炎は胸部画像所見で新規陰影の出現を伴う下気道感染症例とした。他の疾患との鑑別は主治医の判断を尊重した。
本研究の限界
今回の検討はあくまでもretrospective studyであり、RSウイルス群、インフルエンザ群ともに担当医が検査を実施する段階ですでに一定のSelection biasがかかっている成績である点に十分留意する必要がある。
髙橋 洋 他:感染症学雑誌 2016:90(5),645-651
[利益相反:著者にグラクソ・スミスクライン(株)が講演料を支払たものが含まれる。]
PM-JP-RSA-WCNT-230002 2024.10