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病態

●好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)の病態のメカニズム

EGPAの病態には2つの機序があると思われます。1つは本疾患の特徴である好酸球の関与です。すなわち、何らかのアレルゲンによりアレルギー反応が惹起され、好酸球が過剰に増殖し、組織に浸潤します。組織に浸潤した好酸球は、IL(interleukin)-1や腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)などの炎症性サイトカインの産生、ロイコトリエンや血小板活性化因子(platelet activating factor:PAF)などの炎症メディエーターの放出、さらにはETosis(extracellular trap cell death)という好酸球の細胞死により主要塩基タンパク質(major basic protein:MBP)、好酸球カチオン性タンパク質(eosinophil cationic protein:ECP)などを放出して炎症を惹起・持続させ、組織傷害をきたす機序です1。もう1つは、抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)が好中球や好酸球を活性化し、これらの血球から放出された活性酸素や蛋白分解酵素などが血管炎を引き起こし、血流障害を介して虚血性の臓器障害を起こす機序です2。これにより、皮膚潰瘍、多発性単神経炎、糸球体腎炎、肺胞出血、脳血管障害、虚血性腸炎などが引き起こされると考えられます3

EGPAにおける好酸球性炎症およびANCA関連血管炎の背景に存在する可能性があるメカニズム4

図_EGPAにおける好酸球性炎症およびANCA関連血管炎の背景に存在する可能性があるメカニズム

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●好酸球性炎症とEGPA

主病態は気道および全身における強いType2炎症、好酸球性炎症です。Type2炎症/好酸球性炎症を惹起させるサイトカインとして、IL-5や顆粒球‐マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor:GM-CSF)、IL-3、4、13などが想定されます5。エオタキシン-3やGM-CSFはすでにEGPAのバイオマーカーとしても報告されています6-8。急性期のEGPA患者の気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid:BALF)濃度において、IL-5とエオタキシン-3濃度が著明に上昇し、BALF細胞において、IL-5、IL-4、IL-10の遺伝子発現が亢進している報告や、安定期の培養末梢血単核球からは大量の IL-5が産生されるとの報告があります5 9。IL-5産生にはおそらく2型ヘルパーT(T helper 2:Th2)細胞だけでなく、ステロイド抵抗性とされるグループ2自然リンパ球(group 2 innate lymphoid cell:ILC2)10も関与していると思われます。
さらに、比較的軽微ですが、肉芽腫形成を伴う壊死性血管炎があります。本疾患の肉芽腫は、多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)ほど顕著ではなく、好酸球浸潤を伴っており、ステロイドで消退しやすい肉芽腫形成には特異的な機序である外部抗原や病原体の関与が推察され、T細胞活性化によるインターフェロン(interferon:INF)α、TNFα、IL-1、マクロファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor:MIF)などの産生亢進を介した単球の流入に続いてマクロファージの凝集と組織化が関与し、類上皮細胞への発達にいたります。
これら1型ヘルパーT(T helper 1:Th1)とTh2、肉芽腫形成の3つの病態が同時に併存する疾患は他になく、この複雑な病態のためもあり、単一のバイオマーカーでEGPAの病勢を把握することは困難です
11

EGPAにおける主な免疫機構12

図_EGPAにおける主な免疫機構

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●EGPAにおける組織への好酸球浸潤

EGPAにおいて、好酸球が血中のみならず血管や組織中に浸潤することが知られています。以下の報告では、好酸球が神経上膜小血管において管腔の内皮細胞に近い位置に存在することが確認されました。また、血管内腔および血管外間質における好酸球は、断片的に脱顆粒を示しており、活性化されていることが示唆されています。

EGPA患者から得られた腓骨神経生検標本の断面像13

血管内腔からの好酸球の浸潤

写真_EGPA患者から得られた腓骨神経生検標本の断面像

A:好酸球(☆)が神経上膜小血管の管腔内皮細胞に入り込んでいる。
➤は好酸球の遊走の過程を示す。
血管内腔から完全に脱出した好酸球(★)は、
内皮細胞のすぐ外側(➡)に位置している。
B:好酸球(➡)は神経上膜の間質に分布している。
☆は血管内腔の赤血球を示す。

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好酸球の断片的脱顆粒13

写真_好酸球の断片的脱顆粒

A:血管内腔の好酸球が断片的脱顆粒を示唆する所見。
B:Aの□部分の高倍率像。細長く湾曲した管状または環状の構造を有する好酸球ソムブレロ小胞が特定の顆粒の近くに観察される。➤は代表的なソムブレロ小胞像を示す。特定の顆粒マトリックス(➡)は、好酸球ソムブレロ小胞を介した断片的脱顆粒により色が薄くなると考えられる。

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●EGPAの遺伝的背景

EGPAの家族内発症が国内外で報告され、数%であることから遺伝的背景は少なくないと思われます。すでに ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)に関して、欧州から、DRB4DPB 1*03が発症因子として、またDRB3DRB1*13が防御因子として報告されています14。さらにごく最近の欧州におけるEGPA600例以上のゲノムワイド関連解析(genome-wide association study:GWAS)では15、抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(myeloperoxidase-anti-neutrophil cytoplasmic antibody:MPO-ANCA)陽性例(EGPA全体の30%に相当)ではHLA-DQがリスク対立遺伝子として検出され、陰性例(70%に相当)では、好酸球性喘息ですでに指摘されているインターフェロン調節因子5(interferon regulatory factor 5:IRF5)/IL-5、GPA33のバリアントが関連していました。GPA33遺伝子は気道粘膜のバリア機能と関連しているとされています11

MPO+ ANCA関連血管炎、MPO+ EGPAおよびANCA陰性EGPAとこれら分類の根底にある推定遺伝子との関係15

図_MPO+ ANCA関連血管炎、MPO+ EGPAおよびANCA陰性EGPAとこれら分類の根底にある推定遺伝子との関係

MPO+AAV:MPO-ANCA陽性AAV
MPO+EGPA:MPO-ANCA陽性EGPA
ANCA-EGPA:ANCA陽性EGPA
MPO-ANCA:抗ミエロペルオキシダーゼ抗体
AAV:ANCA関連血管炎
ANCA:抗好中球細胞質抗体
TSLP:Thymic stromal lymphopoietin
BIM:Bcl-2ファミリーに属するアポトーシス促進タンパク
CDK6:cyclin-dependent kinase 6
GATA3:GATA binding protein 3
GPA33:glycoprotein A33
IL5:interleukin 5

●EGPAの臨床経過

EGPAの発症経過は、「喘息期」、「好酸球増多期」、「血管炎期」の3相があり、この順でおおむね経過することが古くから指摘されてきました7。しかし、これらは概念的には正しいものの、実際の症例では前2者は併存し明確には区別できません。ほとんどのEGPA患者では、血管炎発症前の喘息のみの時期において、それも初期から、通常の喘息よりも好酸球増多が目立ち、好酸球性副鼻腔炎を併存し、さらに喘息経過中に好酸球性細気管支炎や出現消退を繰り返す慢性好酸球性肺炎も合併しやすいとされています16 17。一方、軽症から中等症の一般喘息患者の経過観察中にEGPAを発症することはまれであり、多くは、重症好酸球増多喘息から発症します。以上から、通常の喘息患者に何らかの因子が働いてEGPAを発症すると考えるよりも、喘息期からEGPA前駆症状(同一病態)があると考えられます11

EGPAの臨床経過18 - 20

図_EGPAの臨床経過

●先行する気道病変の特徴

EGPAはほぼ全例で上下気道の好酸球性炎症、とくに喘息と好酸球性副鼻腔炎が先行し、著明な好酸球増多と多発性単神経炎、臓器虚血症状で発症します。喘息は思春期以降、特に20歳から50歳にかけて発症しやすく、喘息発症初期から重症で好酸球増多が目立ちます。嗅覚低下、鼻閉を主症状とする上気道好酸球性炎症である鼻茸を伴う好酸球性鼻副鼻腔炎もほとんどの例で合併します。アトピー素因は半数以下にしか認めず、強いアトピー体質はないとされています11 21

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