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診断

●診断基準

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)の診断に関して我が国においては基本的に厚労省の診断基準を用いますが表1、それ以外の国際的な分類基準としてLanhamの基準表2と1990年米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)の分類基準表3があります。Lanhamの基準は喘息と好酸球増多と2つ以上の臓器での血管炎所見のみで診断するもので、ACRの分類基準は、喘息、好酸球増多、神経炎、肺所見、副鼻腔所見、好酸球浸潤の組織所見のうち4つが存在すればEGPAに分類される基準です。欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)のアルゴリズムでは、まずLanham基準かACR分類基準のどちらかを満たす患者はEGPAと分類してしまうので顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)/多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)との重複診断は避けられますが、もともと好酸球増多や副鼻腔の異常を伴うことが多い喘息患者においては過剰診断になりやすいと考えられています 1

表1 厚生労働省によるEGPAの診断基準 2

<診断基準> Definite, Probableを対象とする。

1.主要臨床所見
①気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎
②好酸球増加
③血管炎による症状(発熱38℃以上、2週間以上)、体重減少(6か月以内に6kg以上)、多発性単神経炎、消化管出血、多関節痛(炎)、筋肉痛(筋力低下)、紫斑のいずれか1つ以上

2.臨床経過の特徴

主要臨床所見①、②が先行し、③が発症する。

3. 主要組織所見

(1)周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在
(2)血管外肉芽腫の存在

4.診断のカテゴリー
(1)Definite

(a)1. 主要臨床所見3項目を満たし、3. 主要組織所見の1項目を満たす場合
(b)1. 主要臨床所見3項目を満たし、2. 臨床経過の特徴を示した場合

(2)Probable

(a)1. 主要臨床所見1項目および3. 主要組織所見の1項目を満たす場合
(b)1. 主要臨床所見3項目を満たすが、2. 臨床経過の特徴を示さない場合

5.参考となる所見
(1)白血球増加(≧1万/μL)  (2)血小板増加(≧40万/μL)  (3)血清IgE増加(≧600 U/μL)
(4)MPO-ANCA陽性   (5)リウマトイド因子陽性   (6)肺浸潤陰影

表2 Lanhamの基準 3

表3 ACR分類基準(1990年4

基準項目 定義
1. 喘息 喘鳴あるいは呼気時にみられるびまん性の高音のラ音の既往
2. 好酸球性増多症 末梢白血球分画における好酸球増加10%以上
3.単神経炎または多発神経炎 全身性血管炎に起因する単神経炎、多発性単神経炎あるいは多発神経炎 
(すなわちグローブ/ストッキング状分布)
4.肺浸潤(非固定性) 全身性血管炎に起因する移動性あるいは一過性の肺浸潤影を示すX線像
(固定性浸潤は含まない)
5.副鼻腔の異常 急性あるいは慢性副鼻腔痛または圧痛の既往、あるいは副鼻腔のX線像にみられる
混濁化所見
6.血管外組織への好酸球浸潤 動脈、細動脈あるいは細静脈の生検組織において血管外組織への好酸球浸潤を認める
上記6項目中少なくとも4項目以上が認められる場合、EGPAと判定する。

転載許諾を取得済み

図 EMA分類アルゴリズム 5

図_EMA分類アルゴリズム

●ACRとEULARで提唱された新たな分類基準

ACRと欧州リウマチ学会(European Alliance of Associations for Rheumatology:EULAR)が中心になって世界共通の血管炎診断および分類基準作成に向けての多施設共同研究(Diagnostic and Classification Criteria in Vasculitis:DCVAS)が行われ、日本からも多くの施設が参加しました。その最終版の分類基準が2021年のACRで発表され、2022年に論文として公表されました。この新たな分類基準は抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)関連血管炎3疾患すべてを、所見により点数化したものです。しかし、あくまで血管炎と診断された症例に用いるという前提に基づいており、血管炎以外の疾患を除外診断することが重要です。今後、この国際的に統一された基準が血管炎の診療・研究に幅広く使われていくことが予想されます 1

2022 ACR/ EULAR EGPAの分類基準 6

基準適用の際の考慮事項

  • この分類基準は、小血管炎または中血管炎と診断された患者をEGPAに分類するために適用する
  • 鑑別診断により血管炎に類似したものは、この分類を適用する前に除外する必要がある
臨床基準 点数
  • 閉塞性気道疾患
+3
  • 鼻ポリープ
+3
  • 多発単神経炎
+1

検査・生検基準

 
  • 血漿中好酸球数≧1×109/L
+5
  • 生検での血管外の好酸球優位の炎症所見
+2
  • 抗好中球細胞質抗体(cANCA or PR3-ANCA)陽性
−3
  • 血尿
−1
7項目の合計点が6点以上の場合、好酸球性多発性血管炎性肉芽腫症(EGPA)と分類

cANCA:cytoplasmic anti-neutrophil cytoplasmic antibody
PR3-ANCA:proteinase3- anti-neutrophil cytoplasmic antibody

  1. 駒形嘉紀:リウマチ科 2022;67(3), 324-331
  2. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)編集:ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023,p.147
  3. Lanham JG et al:Medicine(Baltimore)1984;63(2), 65-81
  4. Masi AT et al:Arthritis Rheum 1990;33(8), 1094-1100
  5. Watts R et al:Ann Rheum Dis 2007;66(2), 222-227
  6. Grayson PC et al:Ann Rheum Dis 2022;81(3), 309-314