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検査/バイオマーカー

●急性期の検査

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)発症時(急性期)には、末梢血好酸球分画がほとんどの症例で40%を超え、かつ白血球数も2万/mm3以上となります。抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)は30~40%で同定されますが残りは陰性です。クレアチンキナーゼ(creatine kinase:CK)や乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LDH)は全身虚血の程度に応じて上昇し、炎症所見〔C反応性タンパク(C-reactive protein:CRP)、血沈〕も増加します。他に60~70%の症例でリウマトイド因子陽性化と免疫グロブリンG(immunoglobulin G:IgG)(特にIgG4)の増加、血小板増多、血清総免疫グロブリンE(immunoglobulin E:IgE)値上昇を認め、これらは診断の補助となります。血清総IgE値はポリクローナルなIgE増加であるため、多種の特異的IgEが陽性化しますが、寛解時には低下/陰性化します1
発症時の臓器障害を迅速に診断することは非常に重要です。まず生命予後に直結するものとして、自覚症状が出にくい心臓障害(不整脈や虚血性変化)を見逃さないように、ホルター心電図と脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)やトロポニンTなどで正確に把握します。消化管障害も腹痛や下痢、下血がなくても、患者の状態が許せば消化管内視鏡検査を行い、肉眼所見が正常でも生検の実施が望まれます。他に各臓器のCTやMRIと心筋シンチなども可能な範囲で施行します。生検は皮疹部位が最も侵襲性が低いため施行しやすく、血管外の好酸球/リンパ球浸潤所見が得られやすいものの、壊死性血管炎や肉芽腫の検出率は低率です。また、筋、神経、肺、心筋、消化管、腎などの生検は患者状態を考慮し行いますが、副鼻腔生検での血管炎所見は得られにくいです。EGPAの急性期(発症初期)は、急変がありうるため、検査優先でなく、重要臓器の合併症を迅速に評価し、治療優先の考えで進めます
1

●ANCA

抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)は、顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)、EGPAで代表されるANCA関連血管炎において、診断のための検査として重要な自己抗体です2
ANCAは間接蛍光抗体法の蛍光染色パターンにより、P(perinuclear)-ANCAとC(cytoplasmic)-ANCAに分類されます。p-ANCAの対応抗原としては、好中球α-顆粒球中のミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase:MPO)が主なものですが、ラクトフェリン、エラスターゼも認識されます。陽性となる基礎疾患は、壊死性血管炎などの血管炎を共通の病態とするものがほとんどです。ANCAは治療効果、疾患活動性の指標として有用です
3
PR3-ANCAの対応抗原は、好中球α-顆粒中の29kDaのセリンプロテアーゼ(serine proteinase:PR)3です。PR3-ANCA陽性疾患はほとんど(約90%)GPAですが、顕微鏡的多発血管炎でも陽性のことがあります。全身性、多臓器病変、活動期において、陽性となることが多く、限局型や寛解期には陽性率は低くなります(30%)。PR3-ANCA抗体価は疾患活動性と相関があり、治療法の効果、変更などを検討するうえで有用です。寛解後、GPAの臨床的再燃に先行してPR3-ANCAが上昇する場合があります3
2020年EGPAにおけるANCAの検査に関する国際コンセンサス
4が、専門家グループにより合同声明として提唱されました。このコンセンサス・ステートメントは、PubMed、Embase、Scopus で、1951年1月から2020年1月に出版された論文を、"eosinophilic granulomatosis with polyangiitis", "Churg-Strauss syndrome", "eosinophilic vasculitis" という用語を用いて検索し、得られた論文や引用文献を基にRecommendationを作成し、参加者の投票により決定されました。

表 EGPAにおけるANCA測定の国際コンセンサス4

Recommendation
1

ANCA testについての臨床的な指標
EGPAの診断を裏付ける適切なANCA試験の使用を保証するために、喘息または鼻副鼻腔炎および血中好酸球増加症の患者に対して、以下の臨床的特徴の1つ以上が存在する場合は、ANCA testを要請すべきである

  • 発熱、体重減少、関節痛、炎症の臨床検査兆候がある場合の筋肉痛
  • 肺浸潤
  • 感覚性末梢神経障害または運動神経障害(多発性単神経炎を含む)
  • 原因不明の心疾患、例えば不整脈または左室機能低下
  • 尿腎炎沈査、クレアチニン上昇と血尿または新規発症血尿
  • 膿胞出血
  • 虚血性腹部痛およびその他の原因不明の胃腸障害
  • 紫斑病やその他の皮膚湿疹
2 2017年改訂国際コンセンサスに従い、GPAおよびMPAと同様にEGPAでもANCA testを実施すべきである
ANCAの一次スクリーニング法としてMPO-ANCAおよびPR3-ANCAの抗原特異アッセイを使用すべきである
3 MPO-ANCAの陰性結果に基づいてEGPAの診断を除外することはできない
4 MPO-ANCA陽性の結果は、EGPAの診断の根拠として寄与するが、それだけでは診断できない
5 MPO-ANCA陽性は、EGPAの血管炎表現型を同定するほど感度も特異度も高くないが、MPO-ANCA陽性は、血管炎の特徴のより高い発生と関連している
6 ANCAの結果によって、従来のグルココルチコイドによる治療にシクロホスファミド、リツキシマブ*またはメポリズマブを追加するなど、治療法の決定を導くことはできない
7 MPO-ANCA関連EGPA患者における継続的なANCA testの結果(MPO-ANCAの持続、上昇または再発)は、臨床的なアセスメントの正当化に寄与する

*リツキシマブは、EGPAに対して本邦未承認

転載許諾を取得済み

  1. 谷口正実 他:アレルギー 2020;69(5), 293-303
  2. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研 究事業)編集:ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017,p.55
  3. 髙久史麿 監修:臨床検査データブック 2023-2024,p.452-453,医学書院
  4. Moiseev S et al:Am J Respir Crit Care Med 2020;202(10), 1360-1372