症状
気管支喘息、好酸球性副鼻腔炎などのアレルギー性疾患が先行し、これらの治療薬である副腎皮質ステロイドの減量等に伴って再燃を繰り返すうちに、末梢血で著明に好酸球が増加し、発熱、体重減少などの全身症状、多発性単神経炎による手袋・靴下型の知覚および運動障害、虚血性腸炎による腹痛や下血、皮膚血管炎による紫斑などの血管炎症状が出現する、というのが典型的経過です1 2。
疫学調査3 によると、血管炎症状では多発性単神経炎が90%以上と最も高率にみられ、続いて皮膚症状(紫斑、紅斑、潰瘍など)、呼吸器症状(おもに好酸球性肺炎による肺浸潤、好酸球性細気管支炎、胸膜炎、肺胞出血、間質性肺炎など)が多くみられました。文献的にも末梢神経病変、副鼻腔病変、肺病変が多いとされています4。合併頻度は低いですが、心病変、消化管病変は、顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)や多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)と比べて高頻度であり、生命予後にも関わる重要な病変です5。逆に腎病変はMPA やGPA に比べて少なく、その頻度は20~25%4 といわれています2。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)の臨床症状3
全国疫学調査3)
目 的:
日本におけるEGPAの有病率および臨床症状を調査する。
対 象:
EGPA治療を受けた患者965例(ACR分類基準およびLanhamの分類基準によりEGPAと診断された患者315例)
方 法:
調査は2回行われ、1回目は医療機関2,599施設に対してアンケートを実施し、2008年にEGPA治療を受けた患者数を調査した。2回目はEGPA患者を診療していると回答した施設に対してアンケートを実施し、EGPA患者の臨床症状を調査した。
本研究の限界:
最初の調査で決定されたEGPAの有病率が、標準分類(例えばACR基準またはLanham基準)ではなく、担当医師の診断に基づいて測定されたことである。標準分類を満たした患者はわずか67%であったため、EGPA患者の有病率を過大評価している可能性がある。一方、日本人のEGPA患者の大部分が治療を受ける必要があるとされる病院の呼吸器科と耳鼻咽喉科における患者データを収集できなかったため、EGPAの有病率を過小評価している可能性がある。
- 長澤俊彦, 吉田雅治:日本内科学会雑誌 1989;78(3), 352-356
- 天野宏一:臨床放射線 2021;66(10), 1173-1178
- Sada KE et al:Mod Rheumatol 2014;24(4), 640-644
- Furuta S et al:Allergol Int 2019;68(4), 430-436
利益相反:著者にグラクソ・スミスクライン(株)が助成金を支払った者が含まれた。 - Kitching AR et al:Nat Rev Dis Primers 2020;6(1), 71
利益相反:著者にグラクソ・スミスクライン(株)が研究資金、コンサルタント料を支払った者が含まれた。