開発の経緯
ボトックスは、A型ボツリヌス毒素製剤です。ボツリヌス毒素はボツリヌス菌Clostridium botulinumによって産生される神経毒素で、A型が最も安定で毒性が強いとされています[1]。
1977年に米国のScott [2]がA型ボツリヌス毒素を初めて斜視に対して臨床応用し、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸の治療にも用いられるようになりました。
ボトックスは1989年に米国でアラガン社が承認取得したのち、日本においては「ボトックス注100」が1996年に「眼瞼痙攣」に対して承認され、2000年に「片側顔面痙攣」、2001年に「痙性斜頸」の追加効能が承認となりました。
2005年12月、グラクソ・スミスクライン株式会社がアラガン株式会社から本剤の製造販売承認を承継し、2008年10月には「ボトックス注50」の剤形が追加で承認されています。
また、海外において、1995年以降60ヵ国以上(2008年当時)で「2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足」の適応が承認されており、日本においても本効能・効果に対する本剤の必要性が認められ、小児薬物療法検討会議において本剤の既存データの収集および評価が行われました。その報告書を基に審議された結果、新たな臨床試験を実施せず承認事項一部変更承認申請により、2009年2月に「2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足」の追加効能が承認されました。
2009年3月には、厚生省医薬安全局長通知(平成12年9月19日付け医薬発第935号)「医療事故を防止するための医薬品の表示事項及び販売名の取扱いについて」に基づき、販売名を「ボトックス注用50単位」「ボトックス注用100単位」に変更しました。
さらに、2010年10月に「上肢痙縮」および「下肢痙縮」、2012年11月に「重度の原発性腋窩多汗症」、2015年6月には「斜視」、2018年5月には「痙攣性発声障害」、2019年12月には「既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁」および「既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない神経因性膀胱による尿失禁」の追加効能が承認となりました。
2024年6月には、「上肢痙縮」および「下肢痙縮」の適応に対して小児の用法及び用量が承認され、同時に効能又は効果から「2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足」の適応が削除されました。
なお、承認条件に基づき、当社ではボトックスの適正使用を目的として以下の対策を実施しています。
- 医薬品リスク管理計画の策定および実施
- 使用医師の限定(講習および実技セミナー参加医師のみ)
- 使用施設での納入記録および失活・廃棄の管理記録の徹底
[1]Sakaguchi G, et al. Structure and function of botulinum toxins. In:Bacterial protein toxins(Alouf JE, et al, eds), Academic Press, London, 1984:435-443
[2]Scott AB. Trans Am Ophthalmol Soc. 1981;79:734-770
本コンテンツは日本国内の医療従事者向けです。
製剤写真及びPDF資料は、患者指導の目的に限りダウンロード頂けます。
ボトックスは、米国法人のアラガンインコーポレーテッド(米国アラガン社)が有する登録商標です。