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痙縮とは
定義・症状

痙縮の定義と病態

痙縮は「腱反射亢進を伴った緊張性伸張反射(tonic stretch reflex)の速度依存性増加を特徴とする運動障害で、伸張反射の亢進の結果生じる上位運動ニューロン症候群の一徴候」と定義され[1]、脳血管障害、脳性麻痺、頭部外傷、無酸素脳症、脊髄損傷、多発性硬化症など、さまざまな病態が原因となって発症します。欧米の脳血管障害患者に関する調査では、脳血管障害の発作3ヵ月後に19%、12ヵ月後に38%の患者において痙縮が認められたと報告されています[2],[3]。 痙縮により筋緊張が増加すると、さまざまな四肢の姿勢異常をきたし、下表に示したような問題が生じます[4]

痙縮によって生じる問題

  • 症候
    • スパズム
    • クローヌス
    • 疼痛
    • 容姿の変化(disfigurement)
  • 介護時の問題(Passive Function)
    • 身の回りのケア/衛生/着衣の妨げ
    • 食事/座位/睡眠時のポジショニング(姿勢保持)の困難
    • 移乗動作(transfer)の妨げ
  • 動作時の問題(Active Function)
    • ものを握る/到達する(リーチ)/放す/移動させる際の困難
    • 移動性(mobility)/歩行/体重支持の制限

痙縮による姿勢異常の主なパターン

上肢の姿勢異常としてよくみられるものには、肩関節の内転・内旋、肘関節の屈曲、前腕の回内、手関節の屈曲、にぎりこぶし状変形、掌中への母指屈曲などがあります。下肢の姿勢異常としては、股関節の内転、股関節の屈曲、膝関節の屈曲、膝関節の過伸展、尖足・内反尖足、母趾過伸展などがみられます[5]

痙縮による下肢変形

軽症の歩行例の場合、痙縮は主に腓腹筋、ヒラメ筋や後脛骨筋に出現し、尖足歩行を示します。重症になるに従い、ハムストリングや大腿内転筋群あるいは腸腰筋や大腿直筋にも痙縮が目立つようになり、かがみ姿勢やはさみ脚などの異常姿勢として認められます。これらの尖足、内反足、外反足、かがみ姿勢、はさみ脚は、坐位・立位姿勢や歩行機能の発達を障害し、また将来的には下肢関節拘縮・変形へ進行する可能性があります。

痙縮による主な姿勢異常

[ 上肢痙縮 ]

[ 下肢痙縮 ]

[1]Lance JW. In:Spasticity:Disordered Motor Control (Feldman RG, et al, eds), Year Book Medical Publishers, Chicago, 1980:485-494
[2]Sommerfeld DK, et al. Stroke. 2004;35:134-139
[3]Watkins CL, et al. Clin Rehabil. 2002;16:515-522
[4]http://www.neurotoxininstitute.com/
[5]Brin MF, et al. Muscle Nerve. 1997;20(Suppl 6):S208-S220